ピラティスポータル

ピラティスを行う女性

ピラティスって何?

基本の「き」からわかりやすく解説

初心者からベテランまで、ピラティスの本質を理解する

ピラティスとは?

ピラティスは、20世紀初頭にドイツ人のジョセフ・ピラティス(Joseph Pilates)によって考案された運動法です。彼は自身の健康改善のために様々な運動法を研究し、ヨガ、武道、ダンス、ギリシャ・ローマの運動法などを組み合わせて独自のトレーニング方法を開発しました。

当初は「コントロロジー(Contrology)」と呼ばれていたこの運動法は、体と心のコントロールを重視し、特に体の中心部(コア)の筋肉を強化することに焦点を当てています。現在では世界中で愛され、健康維持やリハビリテーション、アスリートのパフォーマンス向上など、様々な目的で実践されています。

「10回のセッションで違いを感じ、20回で違いが見え、30回で新しい体を手に入れる」

- ジョセフ・ピラティス

ピラティスの最大の特徴は、単に体を動かすだけでなく、「どのように動かすか」に重点を置いていることです。正確な動き、呼吸法、集中力を組み合わせることで、効率的に筋肉を鍛え、柔軟性を高め、姿勢を改善します。また、怪我のリスクが低く、年齢や体力に関係なく取り組めるため、幅広い層に支持されています。

ピラティスの歴史

1883年

ジョセフ・ピラティスがドイツのデュッセルドルフ近郊に生まれる。幼少期は喘息や発熱性リウマチなど、様々な健康問題を抱えていた。

1912年頃

イギリスでボクシングのトレーナーとして働いていたジョセフは、第一次世界大戦の勃発により、敵国人として収容所に収監される。

1914年〜1918年

収容所で同胞の健康維持のために独自のエクササイズを開発。ベッドのスプリングを利用した器具を作り、寝たきりの患者のリハビリに活用した。これが現在のピラティスマシン「リフォーマー」の原型となる。

1926年

アメリカに移住し、ニューヨークに最初のスタジオを開設。ダンサーや俳優など、身体を使うプロフェッショナルたちを中心に支持を集める。

1934年

ジョセフは自身の運動法について解説した最初の著書「Your Health」を出版。

1945年

2冊目の著書「Return to Life Through Contrology」を出版。現在のマットピラティスの基礎となる34の動きを紹介。

1967年

ジョセフ・ピラティス、83歳で死去。妻のクララと弟子たちがその遺志を継ぎ、ピラティスメソッドを広める。

1980年代〜

ハリウッドセレブやアスリートの間でピラティスが人気を集め始め、世界的なフィットネストレンドとして広がる。

2000年代〜現在

医療分野でもその効果が認められ、リハビリテーションや予防医学の一環として取り入れられるようになる。現在では世界中に数千のピラティススタジオが存在し、数百万人が実践している。

ピラティスの歴史

ジョセフ・ピラティスの遺志は現代に受け継がれ、世界中で愛されています

ピラティスの6つの原則

ピラティスは単なる運動ではなく、哲学と方法論を持った体系的なエクササイズです。ジョセフ・ピラティスは、効果的なトレーニングのために6つの重要な原則を定めました。これらの原則を理解し、実践することで、ピラティスの真の効果を得ることができます。

1. 呼吸(Breathing)

ピラティスでは、横隔膜を使った深い呼吸を重視します。動きに合わせて意識的に呼吸することで、酸素供給を最大化し、筋肉の緊張を和らげ、集中力を高めます。一般的に、努力する動作(収縮)で息を吐き、戻る動作(伸展)で息を吸います。

2. 集中(Concentration)

各動作を行う際は、体の動きと感覚に完全に意識を向けることが重要です。「ながら運動」ではなく、一つひとつの動きに集中することで、脳と体の接続を強化し、より効果的なトレーニングが可能になります。

3. センタリング(Centering)

ピラティスでは、体の中心部(お腹、腰、お尻、背中下部を含む「パワーハウス」)からすべての動きが始まると考えます。この部分を意識的に活性化させることで、体全体のバランスと安定性を高めます。

4. コントロール(Control)

すべての動きは慎重にコントロールされるべきです。「より速く、より多く」ではなく、「より質の高い動き」を目指します。これにより、怪我のリスクを減らし、効率的に筋肉を鍛えることができます。

5. 精密さ(Precision)

各動作の正確な実行を重視します。体の位置、動きの範囲、タイミングなど、細部にまで注意を払うことで、効果を最大化し、不適切な動きによる悪影響を防ぎます。

6. 流れるような動き(Flow)

ピラティスの動きは、滑らかで優雅であるべきです。各エクササイズは次のエクササイズへと自然に流れるように設計されており、ぎこちない動きや停止を避け、連続的な動きを目指します。

初心者へのアドバイス

ピラティスを始めたばかりの方は、すべての原則を一度に実践しようとすると混乱することがあります。まずは呼吸と集中から始め、徐々に他の原則も取り入れていくことをおすすめします。正しいフォームを学ぶために、初心者向けのクラスや資格を持ったインストラクターのレッスンを受けることも大切です。

ピラティスの主な種類

ピラティスには大きく分けて「マットピラティス」と「器具を使うピラティス」の2種類があります。それぞれに特徴と利点があり、目的や環境に応じて選ぶことができます。

マットピラティス

マット(または床)の上で行うピラティスで、自分の体重を抵抗として使います。ジョセフ・ピラティスが著書で紹介した34の基本動作を中心に構成されています。特別な器具が不要で、自宅でも簡単に始められるため、初心者に最適です。

器具を使ったピラティス

特殊な器具を使って行うピラティスです。最も有名なのは「リフォーマー」と呼ばれる動くベッドのような器具で、スプリングの抵抗を利用してトレーニングを行います。その他にも「キャデラック」「チェア」「バレルス」などの器具があります。

マットピラティスとリフォーマーピラティスの比較

特徴 マットピラティス リフォーマーピラティス
必要な器具 マットのみ(なくても可) リフォーマー機器
場所 自宅、ジム、スタジオなど場所を選ばない 主にピラティススタジオ
難易度 初級〜上級(バリエーション多数) 器具のサポートがあるため、初心者でも取り組みやすい面もある
コスト 低コスト レッスン料が比較的高額
主な効果 体幹強化、姿勢改善、柔軟性向上 全身の筋力バランス向上、より多様な動きが可能
指導 独学可能(ただし正しいフォームのために指導を受けることを推奨) 専門的な指導が必要
どちらを選ぶべき?

初めてピラティスに挑戦する方は、まずマットピラティスの基本を学ぶことをおすすめします。体の使い方や基本原則を理解した後、リフォーマーなどの器具を使ったトレーニングに挑戦すると、より効果的に練習できます。理想的には、両方を組み合わせることで、バランスの取れたトレーニングが可能になります。

ピラティスの7つの主な効果

ピラティスは全身運動であり、定期的に実践することで様々な健康効果が期待できます。科学的研究でも、その効果が裏付けられています。

1. 体幹(コア)の強化

腹部、背中、骨盤底筋など、体の中心部の筋肉を強化します。強い体幹は日常生活での動作をサポートし、腰痛予防にも効果的です。

2. 姿勢改善

体の正しい配置と筋肉バランスを整えることで、姿勢が改善されます。特にデスクワークが多い現代人に効果的です。

3. 柔軟性の向上

筋肉を伸ばしながら強化するため、柔軟性が向上します。これにより動きの範囲が広がり、日常動作がスムーズになります。

4. 全身の筋力バランス

大きな筋肉だけでなく、普段使わない小さな筋肉も鍛えるため、筋力のバランスが整います。これにより怪我のリスクが減少します。

5. ストレス軽減

深い呼吸と集中を伴う動きにより、リラックス効果があります。自律神経のバランスを整え、ストレスホルモンの分泌を抑制します。

6. エネルギー向上

血液循環が促進され、体内の酸素供給が増加することで、エネルギーレベルが向上します。疲労感の軽減にも効果的です。

7. 体型改善

筋肉をしなやかに引き締め、体のラインを整えます。特に腹部、ヒップ、太ももなど、気になる部分の引き締め効果が期待できます。

8. リハビリテーション

低衝撃で怪我のリスクが少ないため、リハビリテーションにも適しています。特に腰痛や肩こりなどの慢性的な痛みの改善に効果があります。

効果を感じるまでの期間

ジョセフ・ピラティスの言葉通り、10回のセッションで体の変化を感じ始め、20回で周囲からも変化が見え始め、30回で新しい体を手に入れると言われています。ただし、個人差があるため、週2〜3回の頻度で3ヶ月程度継続することで、明確な効果を実感できる方が多いようです。

初心者向け基本ポーズ5選

ピラティスを始めたばかりの方でも安心して取り組める、基本的なポーズをご紹介します。これらのポーズは、ピラティスの基礎となる動きで、正しいフォームを身につけることが重要です。

ニュートラルスパイン

仰向けになり、膝を立てます。背骨が自然なカーブを保つように位置を調整し、お腹を軽く引き込みます。これはピラティスの基本姿勢で、多くのエクササイズの出発点となります。

ペルビックカール

仰向けで膝を立て、息を吐きながら骨盤を後傾させ、腰を床に押し付けます。息を吸いながら元の位置に戻します。腹部と骨盤底筋のコントロールを養います。

ブリッジング

仰向けで膝を立て、息を吐きながらお尻を持ち上げ、背中を一椎一椎持ち上げていきます。肩から膝までが斜めの一直線になるようにし、息を吸いながら元に戻します。

シングルレッグストレッチ

仰向けで両膝を胸に引き寄せ、片方の脚を伸ばしながらもう片方の脚は曲げたまま保持します。お腹を引き込み、腰が反らないように注意しながら脚を交互に入れ替えます。

ハンドレッドプレップ

仰向けで膝を90度に曲げ、頭と肩を床から持ち上げ、両腕を体の横に伸ばします。この姿勢を保ちながら、5回呼吸します。徐々に回数を増やしていきましょう。

初心者向けアドバイス

ピラティスは「質」が重要です。少ない回数でも正確なフォームで行うことを心がけましょう。無理をせず、自分の体と対話しながら進めることが大切です。痛みを感じたら、すぐに中止し、必要に応じて専門家に相談してください。

ピラティスの正しい呼吸法

ピラティスでは、呼吸は単なる生理的な行為ではなく、エクササイズの重要な一部です。「胸式呼吸」ではなく「横隔膜呼吸」または「ラテラルブリージング(側胸部呼吸)」と呼ばれる特殊な呼吸法を用います。

ピラティスの呼吸法

深い呼吸はピラティスの効果を高めます

ラテラルブリージングの特徴

  • 息を吸うときは、肋骨を横と後ろに広げるイメージで肺に空気を取り込みます
  • お腹を膨らませるのではなく、横に広げるように意識します
  • 息を吐くときは、肋骨を閉じながら、お腹を引き込みます
  • 常に腹部の筋肉(特に腹横筋)を軽く引き込んだ状態を維持します
  • 鼻から吸って口から吐くのが基本ですが、動きによって変わることもあります

ラテラルブリージングを練習する方法

  1. 1 仰向けになり、膝を立てます。両手を肋骨の横に置きます。
  2. 2 鼻から息を吸いながら、肋骨が横に広がるのを感じます。このとき、お腹は膨らませず、腹部の緊張を保ちます。
  3. 3 口から息を吐きながら、肋骨を閉じ、お腹をさらに引き込みます。
  4. 4 この呼吸を10回繰り返し、呼吸のリズムと感覚をつかみます。
呼吸と動きの関係

ピラティスでは基本的に、努力を要する動き(収縮)で息を吐き、戻る動き(伸展)で息を吸います。例えば、腹筋を使って上体を起こすときは息を吐き、元に戻るときは息を吸います。この呼吸パターンによって、コア(体幹)の安定性が高まり、より効果的にエクササイズを行うことができます。

よくある質問

Q
ピラティスとヨガの違いは何ですか?

ピラティスとヨガは共通点もありますが、起源や目的、実践方法に違いがあります。ヨガは数千年前にインドで生まれた精神的・身体的修行法で、精神的な側面や呼吸法に重点を置き、静的なポーズが多いのが特徴です。一方、ピラティスは20世紀初頭に西洋で開発された運動法で、体の中心部(コア)の強化に焦点を当て、より動的で解剖学に基づいた動きが中心です。また、ピラティスでは特殊な器具を使用することもあります。どちらも素晴らしい運動法ですが、目的に応じて選ぶとよいでしょう。

Q
ピラティスは痩せますか?

ピラティスは直接的な高カロリー消費を目的とした有酸素運動ではないため、短期間で大幅な体重減少を期待するのは難しいかもしれません。しかし、定期的なピラティスの実践は、筋肉量の増加による基礎代謝の向上、姿勢の改善による見た目の変化、体の使い方の改善による日常生活での消費カロリー増加など、長期的な体型改善と健康的な痩身に貢献します。特に、お腹や腰回りなど、気になる部分の引き締め効果が期待できます。最も効果的なのは、バランスの取れた食事と有酸素運動と組み合わせることです。

Q
初心者でも始められますか?

はい、ピラティスは初心者でも安心して始められるエクササイズです。多くのスタジオやオンラインクラスでは、初心者向けのクラスが用意されており、基本的な動きから丁寧に指導してもらえます。また、ピラティスは個人の体力や柔軟性に合わせて難易度を調整できるため、自分のペースで進めることができます。ただし、正しいフォームを身につけるためには、資格を持ったインストラクターの指導を受けることをおすすめします。特に持病がある方や妊娠中の方は、医師に相談の上、専門的な指導を受けるようにしましょう。

Q
ピラティスを始めるのに必要な道具は何ですか?

マットピラティスを始めるなら、最低限必要なのはヨガマットやピラティスマット(通常のヨガマットより少し厚めのもの)です。動きやすい服装も重要で、体のラインが見えるフィット感のある服装が理想的です(正しいフォームを確認しやすいため)。その他、あると便利なのはピラティスリング、ピラティスボール、フォームローラーなどですが、これらは徐々に揃えていけば十分です。リフォーマーなどの大型器具を使ったピラティスに興味がある場合は、専門のスタジオでレッスンを受けるのがおすすめです。初心者の場合、特別な道具よりも正しい指導を受けることの方が重要です。

Q
どのくらいの頻度で行うべきですか?

効果を実感するためには、週に2〜3回、各セッション45分〜1時間程度の練習が理想的です。ただし、初心者の場合は週1回から始め、徐々に回数を増やしていくのもよいでしょう。毎日行う場合は、異なる部位や強度に焦点を当てたプログラムを組み合わせることで、特定の筋肉群に過度の負担がかからないよう注意してください。また、短時間でも毎日続けることで習慣化しやすくなります。例えば、朝の10分間のルーティンを取り入れるなど、自分のライフスタイルに合わせた実践方法を見つけることが長続きのコツです。

Q
ピラティスは年齢制限がありますか?

ピラティスには年齢制限はなく、子どもから高齢者まで幅広い年齢層が実践できます。実際、ピラティスは低衝撃で関節に優しいため、高齢者や関節に問題を抱える方にも適しています。また、動きの難易度や強度を個人の能力に合わせて調整できるため、どの年齢層でも安全に取り組めます。ただし、子どもの場合は発達段階に合わせたプログラムを、高齢者や特定の健康状態の方は医師の許可を得た上で、資格を持ったインストラクターの指導のもとで行うことをおすすめします。年齢に関わらず、自分の体と対話しながら、無理のない範囲で進めることが大切です。

まとめ

ピラティスは単なる運動ではなく、体と心のバランスを整える総合的な健康法です。ジョセフ・ピラティスが100年以上前に考案したこの運動法は、現代の健康課題にも効果的に対応し、世界中で愛されています。

この記事では、ピラティスの基本概念、歴史、6つの原則、種類、効果、基本ポーズ、呼吸法など、初心者が知っておくべき基本情報を紹介しました。ピラティスの魅力は、年齢や体力に関係なく、それぞれのペースで取り組め、継続することで確実に効果を実感できる点にあります。

ピラティスを始める際は、正しいフォームを身につけるために、できれば資格を持ったインストラクターの指導を受けることをおすすめします。また、自分の体と対話しながら、無理なく楽しく続けることが何よりも大切です。

この記事が、ピラティスへの理解を深め、健康的な生活への第一歩となれば幸いです。さあ、今日からピラティスを始めて、新しい自分に出会いましょう!

ピラティスの特徴

  • 体幹(コア)を中心としたトレーニング
  • 質を重視した正確な動き
  • 呼吸と動きの調和
  • 全身のバランスと調整を重視
  • 低衝撃で関節に優しい
  • 年齢や体力に関係なく実践可能
  • マットのみでも特殊器具でも実践可能

初心者向けアドバイス

「始める前に完璧を目指さないでください。始めることで完璧に近づいていくのです。」

- ピラティスインストラクター

ピラティスを始める前に

  • 健康上の懸念がある場合は、医師に相談してから始めましょう
  • 初心者向けのクラスやビデオから始めることをおすすめします
  • 動きやすい服装と、できればピラティスマットを用意しましょう

実践中のポイント

  • 質を重視し、少ない回数でも正確な動きを心がけましょう
  • 呼吸を止めないよう注意し、動きと呼吸を連動させましょう
  • 痛みを感じたら無理をせず、すぐに中止しましょう
  • 自分のペースで進め、他の人と比較しないようにしましょう

継続のコツ

  • 週に2〜3回、30分程度から始めましょう
  • 同じ時間帯に行うことで習慣化しやすくなります
  • 友人と一緒に始めるとモチベーションが維持しやすいです

ピラティスを深く知るために

  • 「Return to Life Through Contrology」 - ジョセフ・ピラティス著(ピラティスの創始者による原典)
  • 「The Pilates Body」 - ブルック・シラー著(現代的なピラティスの解説書)
  • 「Pilates Anatomy」 - ライザ・パリッロ&マルゴ・ナハム著(解剖学的視点からピラティスを解説)
  • 「The Complete Book of Pilates for Men」 - ダニエル・ライアン著(男性向けピラティスガイド)
  • 「The Women's Health Big Book of Pilates」 - ブルック・シラー著(女性の健康とピラティス)